数年前、友人のお誘いで乗馬を楽しんだことがある。最初は馬の背に乗るだけでもひと苦労だったのに、回を重ねるごとに鐙に足をかけ一気に馬上の人になることができた。馬はとても頭がよく私のように下手な人にもそれなりに付き合ってくれる。いつものように右に行こうと思い右の手綱を引いたら左に行くし、あんたの言うことなんか聞いてやるものかと無視を決め込んでてこでも動かないぞと態度で示す。時には急に走り出し振り落とそうともする。友人の上達は早かったが私は全てがスローだった。でも馬の背に揺られて高い目線で草原を散策したあの数ヶ月間はとても気持ちが癒されたように思う。
その後内モンゴルの草原で馬に乗る機会があった。日本で乗っていた馬よりひとまわり小さなモンゴルの馬は観光客用によく訓練されていてとても温和しかった。歩くだけだったので安心して乗馬を楽しめたが少々物足りなさを感じてしまった。振り落とされてもいいの、ちょっとだけ草原を走ってみたかったんだ、あの日のわたしは。